マンションリサーチ株式会社が2025年6月に発表した、2024年から2025年前半にかけての中古マンション価格動向調査によると、中央・港・江東区が価格の上昇をけん引していることが明らかになりました。
特に港区では、人口の伸びが鈍化する中でも坪単価970万円という高水準を維持しています。これは、富裕層による“区内転居”が価格の支えとなっているためです。
本記事では、不動産投資家の視点から「今、なぜこの3エリアが注目されているのか」を掘り下げ、次なる投資戦略のヒントを提供します。

中央・江東は人口増と供給増が後押し

中央区と江東区では、2014年~2025年前半で中古マンション価格が首位・三位にランクインし続けています。
特に江東区は湾岸エリアでの大規模再開発、交通インフラ整備が進行し、人口増加と高所得層の転入が相まって価格上昇が続いています。これは需給バランスが“需要>供給”の状態にあり、価格の下支えが強いことを示しています。
投資家としては、新築供給が続く中でもタワーマンションのブランド性・設備充実度が維持されており、賃料相場も堅調である点が見逃せません。
港区は区内移動が需要を支える

港区では中古マンション坪単価が970万円前後と非常に高額にもかかわらず、人口は伸びていません(23区内で増加率最低)。
これは新たな居住者の流入ではなく、主に同区内の富裕層による住み替えや資産再構成が価格を支えている構図です。つまり、外部需要ではなく“内部需要”が活発化しているため、価格が高止まりしています。
投資戦略としては、流動性が限定されつつも、資産価値維持に強い点が魅力です。
ただし、高価格帯ゆえキャッシュ購入者やローン余力のある層が主なターゲットとなり、短期回転目的には向かないと判断されます。
目黒・品川、次世代注目エリアへ浮上

2024年から2025年前半にかけて、価格上昇率で急伸したエリアに目黒区と品川区があります。
目黒区は代官山・中目黒など感度の高い生活環境が再評価され、供給が限られている中で希少性が価格を押し上げています。品川区はリニア中央新幹線の開業、高層ビル開発によるインフラ改善により、今後注目度が高まると見られます。
次の「中央・江東」となる可能性のある“新興高騰エリア”と位置づけられ、早期参入がリスク分散とリターンの追求に適しています。
金利・ニーズ・出口戦略の三本柱
今後は以下の視点で投資戦略を組むことが重要です。
①金利環境に応じた資金調達戦略
日銀の政策転換により、今後も住宅ローン金利の上昇が想定される局面では、返済計画に不安を感じる投資家も多いでしょう。
そんな中で、変動金利よりも固定金利型を選択することで、将来的なキャッシュフローの見通しを安定させることが可能です。
また、金融資産に余裕のある富裕層であれば、キャッシュ購入により金利リスクを完全に回避し、交渉時の価格優位性を得るケースも少なくありません。
②居住ニーズの変化に応じたターゲット戦略
中央区や江東区では、共働き世帯や単身ビジネスパーソンの賃貸需要が根強く、駅近・コンパクトながら設備が整った物件に人気が集中しています。
対して港区は、すでに住んでいる層がより上質な住環境を求めての“区内住み替え”が活発です。
ここでは、広めのプレミアム住戸やホテルライクな共用施設が選好される傾向にあり、商品企画や運用方法にも工夫が必要です。
目黒・品川については、感度の高い30〜40代層が台頭しつつあり、ライフスタイル志向や利便性を重視した住戸設計がカギとなります。
③出口戦略としてのリセール・運用戦略
新興エリア(例:品川区の開発進行地)では、今後の地価上昇を織り込み、購入後5〜10年を見据えたキャピタルゲインを狙うスタンスが有効です。
一方で、港区や中央区のような既に坪単価が高いエリアでは、賃貸需要の安定性を活かしたインカムゲイン中心の戦略が現実的です。
とくに法人契約や外国人駐在員などのニーズを見越した家具付き賃貸やサービスアパートメント的運用が検討に値します。
締め
今の東京タワーマンション市場は、「中央・江東」の安定需要、「港区」の富裕層内部移動、「新興エリア」の伸びしろという三極構造です。
投資家は、保守的な安定成長と冒険的なキャピタル狙いのバランスを取りながら、「どの局面に自分がいるのか」を見極めて戦略を立てるべきでしょう。