東京のタワーマンションではマンション価値が上昇し続け、数年前にタワーマンションを購入された方は売却益が出るまでになっていることでしょう。通常であれば売却益に所得税がかかるところ、2024年時点では、国は個人が不動産を売却しやすくするために税制面の支援をしています。
中でも「マイホームを売ったときの特例(国税庁No.3302)」は、適用されれば譲渡所得から最大3,000万円控除され、節税効果をもたらしてくれる制度です。本記事では、3,000万円控除特例の内容や適用要件、申請に必要な費用計算について解説します。
マンション売却における税金を3,000万円まで控除する特例解説
マイホームを売却したときに得た売却益は譲渡所得と呼ばれ、数百万円、数千万円にものぼる場合があります。譲渡所得が大きくなれば税金も増えますが、譲渡所得を控除してくれるこの特例を活用すれば大きな節税効果が得られます。
そこで、特例が受けられる要件や特例を受ける際の注意点をあらかじめ知っておきましょう。
3,000万円控除特例の基本概要
マイホーム(居住用財産)を売ったときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があります。これを、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」といいます。
この特例のポイントは、建物の所有期間は関係ないところです。マンション購入後、転勤になっても特例が適用されるので安心ですね!
ただし、控除特例を受けるには要件を満たす必要がありますので、申請前に確かめましょう。
3,000万円控除特例の適用要件
控除が適用される要件は以下の通りです。
(1)自分が住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地や借地権を売ること。なお、以前に住んでいた家屋や敷地等の場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
(注)住んでいた家屋または住まなくなった家屋を取り壊した場合は、次の2つの要件すべてに当てはまることが必要です。
イ その敷地の譲渡契約が、家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
ロ 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと。
(2)売った年の前年および前々年にこの特例(「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例」によりこの特例の適用を受けている場合を除きます。)またはマイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。
(3)売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと。
(4)売った家屋や敷地等について、収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと。
(5)災害によって滅失した家屋の場合は、その敷地を住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
(6)売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係でないこと。
分かりやすくいうと、「今住んでいる家を売りたい(住んでいた家を売った)」「過去2年間にこの特例を受けていない」「他の特例を受けてない」「売買相手が相続関係にはない」という方が対象です。
ただし、この特例は下記のような家屋には適用されません。
(1)この特例の適用を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋
(2)居住用家屋を新築する期間中だけ仮住まいとして使った家屋、その他一時的な目的で入居したと認められる家屋
(3)別荘などのように主として趣味、娯楽または保養のために所有する家屋
また、夫婦共同名義でタワーマンションを所有していた場合はそれぞれに3,000万円控除が適用されます。夫婦共同(1:1)で購入した物件が売却益を得て売れた場合、譲渡所得も1:1となりそれぞれに3,000万円の控除特例が適用されるのです。よって、夫婦共有の場合は6,000万円までの控除が可能です。
3,000万円控除特例を活用する前に知っておくべき注意点
この控除特例は、大きな節税効果をもたらすメリットがありますが注意点もあります。「適用されなかった」もしくは「他の控除が受けられなくて困った」とならぬよう、事前に確かめておきましょう。
売却物件に住民票があっても住んでいなければ適用外になる
売却予定物件に住民票があったとしても、他の場所で生活していればマイホームと認められません。適用されるのは居住しているマイホームです。特例適用外となるだけでなく、嘘の申告をしたとみなされて重加算税が発生する可能性もありますので、生活拠点以外の物件は申請しないようにしましょう。
少し住んでもこの特例を受けることが目的だとみなされると適用外になる
この特例を受けることを目的に売却・購入をしていたとみなされると3,000万円控除の適用が受けられなくなります。住んでいた証拠を得るために近隣住民への聞き込みや郵便物の確認など調査が入る可能性もあります。
3,000万円控除特例を使うと新居購入時の住宅ローン控除は適用されない
買い替えを予定している場合は特に注意が必要です。3,000万円控除特例を使うと、住宅ローン控除が使えなくなるため、新居購入を予定されている方はどちらがお得なのか考えておきましょう。
とはいえ、住宅ローン控除の上限は中古マンション購入の場合210万円なので、3,000万円控除特例を活用する方が節税効果が期待できます。
3,000万円控除特例の申請に必要な事項
控除特例の申請には、売却した建物の取得費用や償却費用、譲渡費用などといった費用を申告しなければなりません。各費用の計算方法や含まれる費用を解説します。
取得費
取得費とは、購入代金、仲介手数料、登記費用、設備費、改良費などの合計額(取得価額)から、償却費相当額を引いたものです。※改良費に関して、通常の修繕費は含まれないためご注意ください。
建物の取得価額 - 償却費相当額
建物の取得価額は、売却した物件の「土地」と「建物」の価額を区分けして書きます。しかし、購入時の契約において土地と建物の価額が分かれていない場合もありますよね。その場合、購入時の時価の割合を計算する必要が出てきます。令和5年分の建築価額一覧表をもとに、下記の算式で計算できますのでご安心ください。
売却した建物の建築年に対応する「建物の標準的な建築価額表」の建築単価 × その建物の延床面積
売却した建物の建築年に対応する「建物の標準的な建築価額表」の建築単価 × その建物の延床面積 - 建築時から取得時までの経過年数に応じた償却費相当額
※マンションの床面積は、専有部分の床面積で計算していただいて差し支えありません。
そして、償却費相当額は下記の算式で計算します。
建物の取得価額 × 0.9 × 償却率 × 経過年数
タワーマンションの場合、鉄骨鉄筋コンクリートでできているため償却率は0.015となります。また、償却費相当額は建物の取得価額の95%が限度ですのでご注意ください。
譲渡費用
譲渡費用とは、仲介手数料、収入印紙代、測量費など譲渡のために直接要した費用、借家の売却に際して借家人に支払った立退料、土地の売却に際して建物を取り壊した場合の取り壊し費用や取り壊し損などの金額を指します。修繕費や固定資産税のような資産の維持管理に使われる費用は含まれません。
課税譲渡所得金額
課税される譲渡所得の計算方法は下記の通りです。
譲渡価額(収入金額)-(取得費 + 譲渡費用)- 特別控除額
国税庁の資料には次のように書かれています。
居住用財産を売却(譲渡)した場合、3,000万円の特別控除が受けられますが、この特別控除は譲渡価額から取得費及び譲渡費用を差し引いた金額が特別控除の額に満たない場合、その金額が限度となります。
少しわかりにくいので下記例で説明します。
譲渡価額1億円、取得費7,000万円、譲渡費用300万円の場合。
長期(短期)譲渡所得は
1億円 -(7,000万円 + 300万円)= 2,700万円
長期(短期)譲渡所得から3,000万円が控除適用されるのですが、控除額MAXの3,000万円を引けば▲300万円となってしまいます。そのため、控除額は長期(短期)譲渡所得と同額の2,700万円となり、課税譲渡所得金額が0円になるという仕組みです。
控除額を引いても譲渡所得がプラスとなる場合をご説明します。
譲渡価額1.5億円、取得費7,000万円、譲渡費用300万円だと…
長期(短期)譲渡所得は7,700万円(1.5億円-7,000万円-300万円)となり、最大控除額の3,000万円を引くと4,700万円残ります。この4,700万円に対して課税されるということなんです。
実は、課税される譲渡所得が4,700万円だったとしても、10年以上住んでいれば、さらに軽減税率が適用されます。
所有期間10年超の軽減税率
措法31条の3「所有期間が10年超の居住用財産を売却した場合の軽減税率の特例」において、所有期間が10年を超える居住用財産で国内にあるものを売却した場合には、軽減税率を適用できる旨が記載されています。
この適用要件は、売却した年の1月1日において所有期間が10年を超える居住用財産(具体的には、2013年12月31日以前に取得した家屋とその敷地)で国内にあるものを売却したこととされています。
また、この軽減税率を受ける場合は、3,000万円の特別控除の申請の他に「売却した居住用財産の登記事項証明書」の添付が必要です。
最終的な税額の計算は下記の通りです。
税額 = 課税長期譲渡所得金額 × 10%(所得税の税率)
税額 = (課税長期譲渡所得金額 - 6,000万円)× 15%(所得税の税率)+ 600万円
マンション売却で税金を3,000万円まで控除するのに必要な書類
3,000万円控除を受けるのに、必要な書類を紹介します。本記事では、相続で譲渡する場合はご紹介していないのでご注意ください。
提出書類
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
- 登記事項証明書
※登記事項証明書に代えて「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」等を提出可能
提出時の注意点
提出書類は確定申告書とともに提出が必要です。売却した年の翌年2月16日~3月15日の間に税務署で確定申告を済ませましょう。
控除を適用して、税金が0円になっていたとしても確定申告は必要となりますのでご注意ください。
マンション売却で税金を3,000万円まで控除したいならまずは税理士に相談
日本の不動産は価値が目減りすると言われている中、東京のタワーマンションは価値上昇しています。そのため、この機にマンションを売却して利益を得たいと思う方は多いことでしょう。そこで本記事では、節税効果の高い3,000万円控除の特例制度をご紹介しました。
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