タワマン節税は、タワーマンションの購入を通じて相続税を削減する戦略として知られています。特に富裕層に人気のあるこの手法は、相続税の軽減を目的として利用されてきました。
しかし、区分所有マンションの評価方法が改正され、2024年1月1日からの相続や贈与においては、ほとんどのマンションの評価額が上がることになりました。国税庁がタワーマンションを含むマンション購入による過度な節税を懸念し、評価方法の見直しを行った結果です。
この新しい規則が導入されることで、タワマンにおける相続税・贈与税の節税の大きな効果が見込めなくなりました。しかし、節税という観点では、まだ余地があります。
今回は2024年の評価方法の改正後における、タワマンの節税について考えたいと思います。
タワマン節税は、2024年から使えない!?
「タワーマンション節税(タワマン節税)」とは、タワーマンションの購入を通じて相続税の負担を軽減する戦略です。
具体的には、タワーマンションの土地の持分が全体に対して小さく、評価額が低めに設定されるため、結果的に相続税が抑えられる可能性があります。この節税方法は、特に資産価値の高い地域において有効とされ、富裕層を中心に利用されてきました。
しかし、評価方法の見直しが進む中で、2024年からは相続税・贈与税の評価方法が変更になりました。国税庁は、タワーマンションを含むマンションの過度な節税対策を問題視し、相続時のマンション評価額を見直すことにより、公平性を保つことを目指しています。
タワマン節税のルール改正についてはこちらをご覧ください↓
この変更により、相続税・贈与税におけるタワーマンションの節税対策は難しくなった・・・と諦めがちですが、両親や祖父母から住宅取得資金として贈与を受けた場合、一定の金額が非課税となる制度が存在するんです。
それが「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」です。
住宅取得等資金贈与の非課税の特例
「住宅取得等資金贈与の非課税の特例」とは、特定の条件を満たした住宅購入資金の贈与に対して適用される非課税制度です。この制度を活用すれば、相続時精算課税制度を選ばなくても、一定額まで贈与税がかからないというメリットがあります。
具体的には、2026(令和8)年12月31日までに両親や祖父母から住宅購入資金として贈与を受けた場合、その贈与金について非課税措置が受けられるんです
この制度では、一般の住宅については最大500万円、省エネルギー等を考慮した住宅では最大1000万円までが非課税とされています。
この特例制度のメリットは次の通りです。
住宅を取得する際に資金贈与を受ける予定があれば、この特例制度の利用を検討してみてはいかがでしょうか?
タワーマンションで節税できる理由
さて、改めてタワーマンションにおける節税を考えてみましょう。
相続や贈与以外でも、節税になる大きなポイントが2つあります。それは、「所得税」と「固定資産税」です。
それぞれを見てみましょう。
タワマン節税1:所得税がお得になる
所得税とは、皆さんもご存じのとおり、個人の所得にかかる税金です。
タワマンを購入し、賃貸として活用する場合、不動産所得で発生する経費を収益と損益通算することによって、この所得税を抑えることができるのです。
特に日本の所得税の仕組みである「超過累進税率」により、所得が多い人ほど、この節税効果は高くなります。
タワマン節税2:固定資産税がお得になる
固定資産税は固定資産の価格をもとに算出される税で、マンションの場合、土地と建物を分けて計算されます。
土地については、各住戸の占有する土地の面積比に基づいて固定資産税の評価額が算出されます。つまり、タワーマンションのように階層が高く住戸数が多い場合、一つの住戸が占める面積比が小さくなり、それに伴って評価額も下がることがあります。
これにより、土地にかかる固定資産税の評価額を低く抑えることができ、全体の固定資産税の負担も軽減される可能性があります。
実は、これがタワマン節税の根幹でした。しかし、2017年の税制改正で評価額の調整が行われ、今回、相続税、贈与税にまでメスが入れられたのです。
それでは、「所得税」と「固定資産税」が節税につながる仕組みを見ていきましょう。
タワマン活用で、所得税がお得になる仕組み
消費税がお得になる仕組みは、賃貸経営する場合にのみ有効です。節税のポイントとなるのは「減価償却」と「支出の経費化」です。それぞれを見てみましょう。
減価償却による節税
減価償却とは、時間の経過によって価値の減少する固定資産について、一度で経費計上せず、何年にもわたり少しずつ資産価値を減少させ、毎年費用計上していく会計処理方法のこと。
減価償却の最大のメリットは節税です。減価償却の利用は、タワーマンションを含む不動産投資において重要な節税戦略の一つです。
減価償却は、不動産の建物部分に対して適用される経済原則です。なので、土地部分は減価償却の対象外なのでご注意ください。しかし、建物と付帯設備は時間の経過と共に劣化や陳腐化するため、その価値が減少すると考えられます。税法上はこの価値の減少を認め、投資者がその減少分を毎年の税務上の費用として計上できるようにしています。
このように減価償却を活用することで、タワーマンションを購入してから、耐用年数が経過するまでの間、長年にわたって税金を軽減できます。
減価償却期間の計算方法
タワーマンションはほとんど、鉄筋コンクリート造(RC造)で建てられているので、法定耐用年数は47年。つまり、新築のタワーマンションだと、減価償却期間は47年ということになります。
中古のタワーマンションの場合、築年数が法定耐用年数の一部を経過しているので、減価償却期間は下記のように計算します。
ただし、築年数が法定耐用年数を上回っている場合は、下記の計算となります。
減価償却の計算方法
減価償却の計算には、「定額法」と「定率法」の2つの主な方法があります。日本の税制ではタワーマンションでは定額法が用いられます。
「定額法」とは、建物の取得コストを耐用年数で割って毎年均等に償却する方法です。
償却率については、国税庁の「減価償却資産の償却率等表」をご確認ください。
デッドクロスに注意
減価償却で節税を考える場合、「デッドクロス」の発生には気を付けなければいけません。
不動産におけるデッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回る状態を指します。例えば、減価償却期間が終わるタイミングで起きます。デッドクロスになると、帳簿上の利益が大きくなり、その結果、所得税が大きくなってしまいます。その理由は下記です。
・ローンの元金返済額=実際に現金として支出するが、経費として計上できない
・減価償却費=実際に現金を支出しないが、経費として計上できる
「経費にできない元金返済>経費にできる減価償却費」となった場合、黒字が大きくなって、所得税が増えてしまうのです
しかし、デッドクロスは必ず避けなければいけないことではありません。なぜなら、減価償却期間が短い中古のタワーマンションでは、デッドクロスは必ず起きてしまうからです。
大切なのは、デッドクロスが起きるという事実を理解し、早い段階から対処方法を想定しておくことです。
また、税制改正によって減価償却のルールが変更されることがあるため、最新の税法に注意を払うことも重要です。
必要経費による節税
賃貸経営における各種経費は税務上の必要経費として計上できるため、年間の所得税負担を軽減することができます。
賃貸経営においては、物件の維持管理や運営に関わる費用を必要経費として計上できます。これには以下のようなものが含まれます。
◆賃貸経営における経費一例
修繕費
管理費
修繕積立金
リフォーム代
広告費
保険料
クリーニング費用 など
収入から差し引く経費が多いほど、帳簿上は利益が少なくなり、節税につなげることができます。
賃貸経営のリスクと対策
賃貸経営を通じての節税は、ただ単に税金を減らすことだけでなく、賃貸ビジネスの収益性を高め、長期的な資産価値の向上にも寄与します。適切な管理と戦略をもって賃貸経営に臨むことで、タワーマンション投資の魅力を最大限に引き出すことができるでしょう。
しかし一方で、賃貸経営には空室リスクやテナントの質に関するリスクも伴います。これらのリスクを管理するためには、物件の適切なメンテナンス、魅力的な賃貸条件の設定、信頼できる不動産管理会社との協力などが重要です。また、市場の動向を常に把握し、必要に応じて賃料の見直しや物件の改善を行うことが成功への鍵となります。
タワマン活用で、固定資産税がお得になる仕組み
固定資産税は、不動産の所有者が支払う税金で、物件の公示価格に基づいて計算されます。タワーマンションにおいては以下のような軽減措置があります。
固定資産税の軽減
固定資産税は、不動産の所有者が支払う税金で、物件の公示価格に基づいて計算されます。
詳しくは、市区町村から送付される固定資産税納税通知書をご確認ください。
ポイントとしては、固定資産税は、土地と建物のそれぞれ分けて計算されてるということです。
つまり、タワーマンションのように、マンションの敷地面積に対して住戸数の多い場合、1戸あたりの面積が小さくなるため、当然、土地の固定資産税も低くなります。
さらに、もう一つのポイントとしては、「小規模住宅用地の特例」の活用です。通常、対象の住宅用地が200㎡以下の部分において、固定資産評価額が6分の1に軽減されます。また200㎡の範囲を超えても、固定資産評価額が3分の1になります。
タワーマンションによっては、「小規模住宅用地の特例」が活用できるので、積極的に活用して節税に努めましょう。ちなみに、「小規模住宅用地の特例」によって、都市計画税も軽減されます。
ちなみに、固定資産税評価額は、3年に1度、見直しが行われます。理由は、地価の変動や建物の経年劣化に対応するためです。
固定資産税の軽減措置【2026年まで延長】
固定資産税が軽減される特例措置がいくつか設けられているので、うまく活用しましょう。
特に、タワーマンションで活用できる固定資産税が軽減される特例措置をご紹介します。
小規模住宅用地の特例
通常、住宅用地の200㎡以下の部分において、固定資産評価額が6分の1に軽減されます。これを「小規模住宅用地の特例」といいます。
タワーマンションも同様で、この「小規模住宅用地の特例」を活用して、1戸ごとに200㎡まで「固定資産税×1/6」という軽減措置を受けられます。もし3戸のタワーマンショを保有しているなら、200㎡まで3戸ともに固定資産評価額が6分の1になるのです。
200㎡の範囲を超えても、「一般住宅用地の特例」が採用され、固定資産評価額が3分の1になります。つまり、300㎡のタワーマンションであれば、200㎡分が「小規模住宅用地の特例」で6分の1になり、100㎡分が「一般住宅用地の特例」で3分の1になります。
実はこの特例は、都市計画税の軽減にも有効なんです
都市計画税は、200㎡までの部分が3分の1、200㎡を超える部分が3分の2に軽減されます。
申込書は各自治体のHPからダウンロードできるので、探していただければと思います。
新築マンションにおける固定資産税の軽減措置
新築マンションに適用されるこの減税措置は、特定の条件を満たすことで一定期間、固定資産税が軽減されます。具体的には、以下の条件をクリアする必要があります。
住居スペースの比率
マンション全体の床面積のうち、住居部分が半分以上であること
課税対象床面積
一住戸あたりの床面積が40㎡〜280㎡であること。ここでの床面積とは、住戸専有部分と各戸に割り振られた共用部分の合計した床面積です
これらの要件を満たすと、120平方メートル相当の固定資産税および都市計画税が2分の1に減額されます。適用期間は、3階建て以上の耐火建築物のマンションでは5年間、それ以外の住宅では3年間とされています。
減税措置を受けるためには、新築された住宅が対象で、2026(令和8)年3月31日までに建築完了している必要があります。
適用を希望する場合は、建築した翌年の1月31日までに地方自治体の税務課に申請しましょう。この減税措置を活用することで、新築マンションの所有者は大きな税金の節約を実現できます。
認定長期優良住宅の固定資産税の減額措置
「長期優良住宅」として認定されたマンションには、通常よりも長い期間、固定資産税が減額される特典があります。具体的には、以下のような条件で減税が適用されます。
耐火建築物のマンション
3階建て以上の耐火建築物で「長期優良住宅」に認定されたマンションの場合、7年間にわたって120平方メートル相当分の固定資産税および都市計画税が半額になります。
その他の長期優良住宅
上記以外の長期優良住宅では、減税期間が5年間です。
この減税措置を受ける対象は、2026(令和8)年3月31日までに新築された住宅に限られます。減税の適用を希望する場合、新築した翌年の1月31日までに、お住まいの地方自治体の税務課に申請が必要です。
この制度を利用することで、長期優良住宅の所有者は、より長期間にわたる税金の軽減を享受できるようになります。
リスクを理解し、節税効果を最大限に
タワーマンションを節税対策として購入する際には、多くの利点がありますが、同時に考慮すべきリスクも存在します。これらのリスクを理解し、適切に対処することが成功への鍵となります。以下に主なリスクとそれに対する対策を詳しく説明します。
市場価値の変動リスク
不動産市場は経済状況や政策、社会のトレンドに大きく影響を受けるため、購入時には高かったタワーマンションの価値が将来的に下落する可能性があります。特に高額なタワーマンションの場合、市場の小さな変動が大きな影響を及ぼすことがあります。
対策方法
市場動向を定期的にチェックし、地域の開発計画や経済状況に注意を払うことが重要です。また、購入前に専門家の意見を聞いたり、長期的な市場予測を参考にすることも有効です。
流動性のリスク
タワーマンションは一般的に価格が高いため、売却時に速やかに買い手が見つかるとは限りません。このような流動性の低さは、急な資金需要が生じた場合に問題となることがあります。
対策方法
流動性リスクを軽減するためには、購入する物件の選定にあたって、地域や物件の人気、将来性を考慮することが大切です。また、非常に流動性が高い他の資産を保有することでバランスを取るのも一つの方法です。
高額な維持管理費
タワーマンションはその規模や設備の充実から、維持管理費が高額になりがちです。これらの費用は長期にわたって負担する必要があるため、予想外の出費が節税効果を相殺することもあります。
対策方法
維持管理費については、事前に詳細な情報を得て、長期的なコスト予測を立てることが重要です。また、物件購入時にこれらのコストを考慮に入れた上で収支計画を立てることが望ましいです。
融資利用時の金利変動リスク
タワーマンションを購入する際に大規模な融資を利用する場合、金利が変動するリスクが伴います。特に長期間にわたるローンでは、金利が上昇すると返済額が増加し、予想外の負担が生じる可能性があります。
対策方法
固定金利のローンを選択する、または金利変動に対するリスクヘッジ策を講じることで、金利の変動リスクを管理できます。ローン契約前に複数の金融機関を比較検討することも重要です。
これらのリスクを適切に管理することで、タワーマンションの購入を通じた節税対策の成功に結びつきやすくなります。投資には常にリスクとリターンが伴うものですので、それぞれのリスクを冷静に評価し、慎重に対応することが求められます。
タワーマンション節税の成功例
実際の節税成功例として、港区に位置するタワーマンションの一室を購入し、節税効果を実感された投資家は少なくありません。これらの事例から学ぶことは多く、適切な物件選びと賃貸経営のノウハウが成功の鍵を握っています。節税対策を考える際は、これらの成功例を参考にすると良いでしょう。
タワーマンションを活用した節税の成功例をさらにいくつかご紹介します。これらの例は、具体的な戦略とその実行によって、どのように税負担が軽減され、資産形成が促進されたかを示しています。
高級タワーマンションの賃貸経営
東京の中心部に位置する高級タワーマンションを購入し、それを賃貸に出すことで高い収益を確保した事例です。この投資家は、物件の購入時に新築だったため、初年度の固定資産税が免除されるとともに、次の2年間は税額が大幅に軽減されました。
さらに、賃貸経営に伴う様々な経費(修繕費、管理費、広告費など)を必要経費として計上し、所得税の負担を減らすことができました。この戦略により、初期の大きな投資を回収しつつ、長期的な安定収入を確保しています。
節税目的の不動産投資クラブへの参加
ある不動産投資クラブは、メンバーからの出資を基に複数のタワーマンションを購入し、それを賃貸して運用する戦略をとっています。クラブは特定の節税措置を活用しており、メンバーは投資した金額に応じて減価償却費と必要経費の計上を通じて個々の税負担を軽減できます。
この集団投資により、単独で投資するよりも少ないリスクとコストで不動産投資を行い、節税効果も享受しています。
タワーマンションを用いた相続対策
高齢の投資家が、タワーマンションの一室を購入し、その物件を子どもに贈与する形で相続対策を行ったケースです。この方法により、相続税の節税を実現しました。タワーマンションは市場価値が高く、相続時精算課税制度を利用して、贈与した物件の評価額を相続税の基礎控除額内に収めることができたため、税負担を大幅に軽減しました。また、この物件はその後も賃貸として運用されており、贈与を受けた子どもにとっても安定した収入源となっています。
これらの成功例は、タワーマンション投資が単なる住居の提供だけでなく、賢い税務戦略としても利用できることを示しています。適切な計画と管理により、節税効果を最大化しつつ、資産の価値を長期にわたって保持または増加させることが可能です。
まとめ
タワーマンションを利用した節税対策は、単に税金を減らすだけでなく、資産を形成し維持する上で非常に有効な手段です。地域の市場動向を見極め、長期的な視点で投資を行うことが、成功への道を拓く鍵となります。
ただ、税制改正はいつなんどき起きるか分からないので、情報をこまかくチェックしていただければと思います。タワマンマニアでもリアルタイムな有用な情報を発信していきます。