2025年8月22日のデイリー新潮の記事「日経新聞がスクープ…業界激震の千代田区「マンション転売規制」のウラ側 “3LDK2億円超”市場にメス? 要請を受けた「不動産協会」の困惑とは」によると、東京都千代田区が不動産業界に対して異例の要請を出したことが明らかになりました。
その内容は、再開発マンションに対し「購入後5年間の転売を原則禁止」とする契約上の制約を課すこと、さらに「同一名義での複数戸購入を禁止する」というもの。
対象は今後許認可を受ける市街地再開発事業などに限られますが、この動きが都心タワーマンション市場に与えるインパクトは小さくありません。

デイリー新潮が報じた “業界激震” の要請とは
背景には、千代田区が実施した調査で、2025年に完成した分譲マンションのうち、約7割が無居住(実際に人が住んでいない)であることが判明した事実があります。これにより、転売益を狙った“投機的購入”が常態化し、実需層が住めない事態が深刻化しているというのが区の問題意識です。
要請を受けた不動産協会は、事前説明がなかったことや、行政指導としての法的根拠の曖昧さ、契約違反時の実効性の担保が困難であることから「合理的でない」と反発。
8月22日時点で協議は続いていますが、区と業界の温度差は大きく、政策の行方は不透明な状況です。
転売規制で変わる投資戦略の組み立て方
今回の要請は、短期転売によるキャピタルゲインを狙う投資家に対し、実質的なブレーキとなる可能性があります。これが他自治体にも波及すれば、都心部でのタワーマンション投資の“短期回転モデル”は成立しづらくなるでしょう。
一方で、供給抑制が強まれば、一定の希少性が保たれ、長期的な資産価値の安定化にはつながる可能性があります。今後は「短期売却益を狙う物件」よりも、「長期保有して賃貸運用または将来の資産化が期待できる立地・仕様」のタワマンを見極める戦略が重要です。
特に注意すべきは次の3点です。
別視点からの洞察:広がる議論と制度化の可能性
今回の報道について、さまざまな洞察がなされているのでご紹介します。
ロイターが示す全体像:「政策議論の波及力」
2025年8月21日付ロイター報道では、投機的なマンション取引を抑制する千代田区の要請について、「都心部での住宅価格の高騰および社会的な不満が高まる中、売買規制の議論が熱を帯びている」と報じられています。
また同社によると、2025年上半期の首都圏新築マンション平均価格は前年同期比17%増、東京23区では20%増に達し、需給逼迫と価格上昇の構造を裏付けているデータも紹介されています。
こうした報道は、千代田区の要請が“特異な地域対策”に留まらず、他自治体への制度導入を促す契機になり得る可能性を示しています。
IESHILが示す実務的な動き:「自主ルールの先行」
一方、不動産系コラムサイト IESHIL は、「千代田区の転売規制要請は全国初」の動きであり、すでに一部の不動産会社は短期転売防止の特約を自主的に導入し始めていると報告しています。
また、住宅ローン金利が上昇している現状を踏まえれば、規制が実務に与える影響は多方面に及ぶことが予想されます。
これらを踏まえたアドバイス
この別視点を踏まえると、投資家に向けて以下のようなアドバイスも付け加えることが有効です。
タワマン市場は現在、価格高騰のピークから踊り場に向かいつつあります。今回のような政策的揺さぶりは、投資家にとっては「焦らず・選ぶ」フェーズへの転換点と言えるでしょう。