転勤や家族構成の変化などで、購入した家に住み続けられなくなった場合、賃貸に出すことを考える方も多いでしょう。しかし、住宅ローンの返済が続いている場合、賃貸に出すことは重大なリスクが伴います。
本記事では、マンションを貸し出す際の注意点とデメリットを理解していただき、それでも貸し出すという方へ向けて、おすすめの客付け方法をお伝えします。
マンションを賃貸に出す際の注意点
住宅ローンで購入した家を賃貸に出すことは、金融機関との契約違反になる可能性があります。理由は「住宅ローンは、契約者が実際にその家に住むことを前提に低金利で設定されているため」です。契約違反が発覚すると、下記のような深刻な問題に発展する可能性があります。
- 住宅ローンの一括返済を求められる
- 高金利の投資ローンへの借り換えを強いられる
金融機関は定期的に残高証明書やキャンペーン情報を送付しており、そうした郵便物が届かず、返送されるのが原因で賃貸に出していることが発覚します。また、近年では金融機関による直接の訪問調査も増えているため、発覚のリスクは高まっていると言えるでしょう。
マンションを賃貸に出すことを例外的に認められるケース
マンションを賃貸に出すことを認められる例外は下記のとおりです。
- 遠方への転勤や介護など、やむを得ない事情がある場合
- 売却しても住宅ローンの返済が困難な場合
- 賃貸の収支がプラスになる場合
こうした理由があって賃貸に出したい場合、金融機関に相談すれば例外的に賃貸が認められる可能性があります。しかし、この条件を満たしたとしても必ずしも認められるとは限りません。認められるであろうと見越して、先に賃貸に出すのは止めておきましょう。
マンションを賃貸に出す際のデメリット
家を賃貸に出すと、賃貸収入が得られるメリットはありますが、意外にも多くのデメリットも存在します。ここでは5つのデメリットを紹介します。
自分が住みたいときに住めない
借地借家法により、正当な理由なく賃借人に退去を求めることは難しくなります。定期借家契約での貸し出しをすれば住めるようになりますが、転勤で戻って来る時期が決まっていない場合、一般的な契約の普通借家契約を結ぶことになるでしょう。
新たな住宅ローンが組みにくい
すでに住宅ローンがある状態で、新たな住宅ローンを組むのは困難です。金融機関と相談した結果、住宅ローンで賃貸に出すことが認められたとしても、新たな住宅ローンを組むことは難しくなります。
売却が困難になる
賃貸中の物件は居住用として売却できません。不動産投資家に向けて、オーナーチェンジという形で売却することは可能ですが、利回りが低ければ買い手を見つけるのが難しくなります。
ランニングコストがかかる
固定資産税、管理費、修繕積立金などの費用が継続的にかかります。ランニングコストが家賃収入を上回る場合は売却が好ましいと言えます。
修繕費用の負担
設備の故障や建物の劣化に伴う修繕費用は、オーナーの負担になります。給湯器が壊れた、換気扇が壊れたといった修繕積立金とは別の出費が必要になることがあります。
住宅ローンで購入した家を賃貸に出すことは、法的・経済的リスクが高いため、慎重な検討が必要です。やむを得ない事情がある場合は、必ず事前に金融機関に相談し、適切な対応を取ることが重要です。安易に賃貸に出すことは避け、売却も含めてさまざまな選択肢を検討しましょう。
それでも賃貸に出したい場合は、金融機関からの承認を得たうえで、次の流れで賃貸に出すことをおすすめします。
マンションを賃貸に出す流れ
マンションを賃貸に出す際の流れは下記の通りです。
- 賃貸に出して需要があるか再確認する
- 周辺の賃貸物件の家賃相場を調べる
- 駅前の不動産会社に声をかける
- 1つの不動産会社で客付けも管理もお願いする
とくに4番目が重要です。不動産投資の最大のリスクである『空室リスク』を回避するためにも、4つ目は読んでいただきたいと思っています。それでは順に解説します。
1|賃貸に出して需要があるか再確認する
「今、一番需要のあるのは、この街でどんなマンションか?」この答えと賃貸に出したい家が合わなければ、賃貸には出さず、売却することをおすすめします。
例えば、学生や単身者が多い地域でファミリー物件を貸し出しても需要がありません。逆もしかりです。いつまで経っても借り手が見つからず、ローン返済が続くといったリスクが挙げられます。
「賃貸に出したい家の周りにはどんな人が住んでいるか」「どんな施設(スーパーやコンビニ、病院等)があるか」「駅からの距離」など、周辺環境から想定される借り手が求める家を貸し出そうとしているのか、今一度確認してみましょう。
2|周辺の賃貸物件の家賃相場を調べる
いくらで貸し出せるのか家賃相場を調べます。このとき、間取りが似ている部屋と比べてください。
また、駐車場の空きがあるかを入庫希望者は重視するため、競合物件に駐車場があるかどうか、代金もチェックしておきます。競合物件よりも、こちらの駐車場代が高ければ、少し賃料を落として入居者にアピールすることも可能です。
3|駅前の不動産会社に声をかける
自分だったら入りたいと思える駅前の不動産会社に、賃貸に出したい旨を伝えます。「自分だったら入りたいと思える駅前の不動産会社を選べ」と言われると難しいかもしれませんが、きれいな店舗で、賃貸物件の広告が張り出されている不動産会社を目安にします。
そこで希望の賃料を伝え、希望賃料で貸し出せそうか質問します。
4|1つの不動産会社で客付けも管理もお願いする
設備の故障やトラブルの対応は、自主管理にすると全て自分でおこなわなければなりません。不動産会社にお願いすると家賃の5%ほど取られますが、労力がかからないので管理までお願いするのをおすすめします。
そしてここから重要なのは、客付けの仕方です。
客付けと管理をお願いした専任の不動産会社を通して、他の不動産会社へ客付けのお願いをしてもらういましょう。理由は、1社の不動産会社で集客するよりも集客率が良くなるからです。
自ら複数の不動産会社へ足を運び、それぞれで専任媒介契約を結んでもよいのですが、専任媒介契約を結んだ複数社だけで集客しても発信力が乏しく、なかなか入居希望者が集まりません。そのため、専任媒介契約を結んだ1社の不動産会社から他の不動産会社へ協力依頼し、募集をかけた方が入居希望者が集まりやすくなります。
ただし、入居者が決まった際には、専任媒介契約の不動産会社と、客付けしてくれた不動産会社へ謝礼として家賃の1か月分の支払いが必要です(計2か月分)。
※自分で複数の不動産会社と専任媒介契約を結んだ場合、他社へ協力を仰ぐ必要はないため家賃1か月分の支払いで済みます。
家賃2か月分を支払ってまで他社に協力を仰いだ方がいい理由は、早く客付けできるからです。
会社員の辞令が出る2月~3月、大学の合否が出て家探しをしはじめる頃にいち早く物件情報を公開できると、客付けできる可能性が高まります。
募集時には礼金を設定していると思いますので、この礼金を家賃2か月分で設定し、実質0円で客付けできる仕組みです。
人の移動が盛んになる前の2月に物件情報を広く公開できるかが重要です。もし、2~3月に入居者が決まらなければ、そのあと半年間以上空室になる可能性もあります。空室期間にローン支払いできればよいのですが、余剰資金は減り、生活も苦しくなる可能性があります。
マンションを賃貸に出す際は住宅ローンに注意が必要
マンションを賃貸に出す際、住宅ローン残高があると金融機関の承認が必要となります。未承認で賃貸に出してしまい、バレてしまうと一括返済や投資用ローンへの借り換えが必要となりますので、必ず承認を得るようにしましょう。
金融機関からの承認が得られて賃貸に出す際には、デメリットもあることをお伝えしました。家庭内でよく話し合い、賃貸に出すかどうかを決めていただきたいと思います。
賃貸に出す際には、空室リスクを軽減させるため、紹介した方法を試してみてください!