離婚を考える際、多くの方が気になるのが「家のローンをどうすればいいのか?」という問題です。特に住宅ローンは金額が大きく、長期にわたって支払いが続くため、離婚後の生活に大きな影響を与える可能性があります。本記事では、離婚時における住宅ローンの処理方法や、注意すべきポイントについて詳しく解説します。
離婚しても家のローンは支払う義務がある
まず理解しておくべきことは、住宅ローンは債務者と金融機関との契約であり、離婚してもその契約内容が自動的に変更されるわけではないという点です。ローンの支払い義務は、契約書に記載された債務者に引き続き課されます。
住宅ローンの契約形態は主に以下の4つがあります。現在契約中の住宅ローンがどのような形態にあたるか確認しましょう。
- 単独債務:債務者のみに支払い義務がある契約
- ペアローン:夫妻双方に支払い義務がある契約
- 連帯債務:夫妻双方に支払い義務がある契約
- 連帯保証:債務者のみ支払い義務があるが、もしもの場合は連帯保証人にも支払い義務が生じる
離婚時にローンが残っている家の3つの対処法
離婚時に住宅ローンが残っている場合、住む家は下記3つの方法で対応していきます。
- 家を売却する
- 夫が住み続ける
- 妻が住み続ける
家を売却する場合
離婚後、夫婦のどちらも家に住み続けない場合、家を売却する方法があります。まず、不動産会社で家を査定してもらい、売却可能価格とローン残高を比較します。売却価格がローン残高を上回る場合、売却益から諸費用を引いた後、残った金額を財産分与として分けることができます。
一方、売却価格がローン残高を下回る場合、売却してもローンが残るため、話し合いが難航することがあります。この場合、夫が単独で債務者となっているなら、夫に支払い義務が生じますが、夫婦間で分担するケースもあります。
例えば、夫に慰謝料の支払い義務がある場合、慰謝料と住宅ローンの負担分を相殺する、もしくは住宅ローンを払う代わりに養育費の負担を減らすという方法です。
夫が単独名義で住宅ローンを借りており、離婚後に支払いができない場合は、自己破産を検討することも可能です。自己破産するとブラックリストに載りますが、社会的な制裁は受けませんし、通常の生活はできます。
そもそも、夫婦が共有名義の場合、片方が売却に反対すれば家を売ることはできません。共有持分を売ることはできますが、価格が安くなってしまうだけでなく、購入者の購入リスクは高まります。また、抵当権がついた家は金融機関の担保に入れられているため、購入後に元の持ち主が住宅ローンを支払い遅滞した際に担保に取られるといった購入側のリスクが高いことも売りにくくなる理由の1つです。ローン残高を一括で支払い、抵当権を消さなければ高く売ることはできないのです。
夫が住み続ける場合
夫が単独債務者であり、離婚後も夫が住み続ける場合、基本的にはこれまで通り夫がローンを支払って住むことになります。しかし、家の査定金額がローン残高よりも高かった場合、妻はその差額の半分をもらう権利があります。つまり、夫は財産分与で精算し、住み続けることになるのです。
また、夫が住み続ける場合でも、妻が連帯債務者や連帯保証人になっているケースでは注意が必要です。離婚時に夫が「住宅ローンは自分が払っていく」と言っていても、金融機関との関係では妻に対する請求権が残っています。そのため、夫が支払いを滞らせると、妻に請求が行くことになります。妻は夫に名義を外してもらうよう説明し、夫の親族に保証人を変わってもらったり、夫の財産から新たな担保を差し入れるなどして金融機関と交渉し、債務名義を外してもらう必要があります。
しかし、金融機関はこういったケースを認めないことが多いです。新たな債務名義者(両親や親族)が経済的に信用のおける人物であれば認めてもらえるかもしれませんが、そうでない限り難しいでしょう。
妻が住み続ける場合
妻が住み続ける場合、以下の2つのケースに分かれます。
夫が住宅ローンを支払う場合
夫が単独名義で住宅ローンを契約している場合、支払い義務は夫にあります。しかし、自分が住んでいない家のローンを元妻のために支払い続けるのは、夫にとってストレスとなることもあります。こういった場合には、慰謝料や養育費の支払い義務を軽減する形で合意を取る方法もあります。
ただし、夫が住宅ローンの支払いを遅滞すると家が競売にかけられ、妻は家を出なければならないリスクもあります。これらのリスクを認識したうえで、慎重に話し合いを行う必要があります。
妻が住宅ローンを支払う場合
夫婦で連帯債務を負っている場合や、夫が単独名義で住宅ローンを契約しているがリスクを考慮して妻名義で借り換える場合があります。妻が住宅ローンを払い続けるには、金融機関との交渉が必要となり、安定した収入や親族からの金銭援助、連帯保証人が必要となります。また、名義が夫のままで妻が支払う場合、夫が勝手に家を売却するリスクがあるため、注意が必要です。
公正証書を残して離婚時のトラブルが減らせる
お互いに協議して離婚する際、「言った」「言ってない」といった口約束によるトラブルを避けるため、公正証書を作ることをおすすめします。
公正証書とは、法務省からお墨付きを得た公証人が作成する文書です。公正証書には、法的な証明力と執行力があり、後から否定しても認められず、約束していた慰謝料や養育費の金額が支払われなければ裁判で強制執行をかけることも可能です。そのため、離婚後に妻が家に住み続ける場合、公正証書があれば支払いが遅れても妻は安心して生活できるようになります。
離婚時に家のローンでもめる前に話し合っておく
離婚を前提として、離婚時の住宅ローンについて話し合うのは気が引けますが、事前に決めておくことが大切です。住宅ローンの契約内容、名義人・保証人の内容、保証人変更のための要件を金融機関に細かく確認し、話し合うことで、「誰が住み続けるのか」「誰が住宅ローンを支払うのか」といった話や、財産分与の方法をすぐに決めることができます。
離婚後に安定した生活を送るためにも、事前にできる限りの準備と話し合いを重ねておきましょう。