住宅ローンを検討する際、多くの人が直面するのが「変動金利」と「固定金利」の選択です。特に変動金利は、初期の金利が低いため、多くの人が魅力を感じます。
しかし、その仕組みやリスクを理解していないと、後々の負担が大きくなる可能性があります。今回は、変動金利の仕組みを構成する「基準金利」と「適用金利」の違いについて詳しく解説し、変動金利のメリットとデメリットを見ていきましょう。
住宅ローンの変動金利を構成する「基準金利」「適用金利」について解説!
どうやって変動金利が決められているかを知ると、長期目線でムダな出費を抑えられるようになります。将来の借り換え時にも役立つ知識ですので、しっかりと勉強していきましょう。
基準金利とは各銀行が設定する住宅ローンの基礎となる金利のこと
基準金利は、各銀行が設定する住宅ローンの基礎となる金利です。この金利は、銀行が資金を調達するためのコストや、市場の金利動向に基づいて決定されます。一般的に、基準金利は以下の要素に影響を受けます。
- 日銀の政策金利:短期プライムレート(短プラ)
- 市場金利:長期金利や短期金利の動向
- 銀行の資金調達コスト:預金金利や資金調達のコスト
各銀行の短プラに+1%したものが基準金利の目安と言われています。
適用金利とは住宅ローンの借り手が支払う金利
適用金利は、実際に住宅ローンの借り手が支払う金利です。適用金利は、基準金利から「引き下げ幅」を差し引いたもので決まります。引き下げ幅は、借り手の信用度やローンの種類によって異なります。
引き下げ幅の決まり方
- 信用度:公務員や大企業の正社員は引き下げ幅が大きくなる傾向がある
- 借入額と返済期間:借入額が大きく、返済期間が長い場合、引き下げ幅が小さくなることがある
- 取引状況:同じ銀行で複数の取引を行っている場合、引き下げ幅が大きくなることがある
引き下げ幅は審査によって決められ、一度借りると完済までずっと一定です。そのため、借りた後の金利が上がるか下がるかは、基準金利次第となります。
住宅ローン変動金利の仕組みを解説
変動金利は、基準金利に連動して適用金利が変動するタイプの金利です。
具体的には、基準金利が変わるたびに適用金利も見直される仕組みになっており、基準金利が下がれば適用金利も下がりますが、逆に基準金利が上がると適用金利も上がるリスクがあります。
ここでは、変動金利の過去推移と、急な金利上昇で支払いができなくならないよう設けられたルールについて解説します。
変動金利の過去推移
変動金利の過去からの推移は下記の通りです。
このグラフは、銀行のホームページ等に記載された金利の中央値とのことで、個人の返済能力に応じて引き下げを行った金利ではなく、基準金利を表しています。
固定金利は激しく変動していますが、変動金利の基準金利は2009年以降変わっていませんね。
ここでポイントとなるのが適用金利です。各銀行は適用金利で差別化するようになり、適用金利の引き下げ競争が激化。ネット銀行が生まれたこともあり、さらに適用金利の引き下げが行われるようになりました。
10年、15年前に借りた人は適用金利引き下げの恩恵を受けずに、高い利率で借りている可能性がありますね。
「変動金利だから、金利が下がれば自分たちのローン金利も下がる」と思われがちですが、実は大きな間違い!契約当初に適用された適用金利が高ければ、後からローンを組んだ方に比べて適用金利が高いのです。
そのため、最適な住宅ローンで借りるには、半年に1回見直される短プラ(基準金利)の動向をチェックしつつ、今よりも低い適用金利で借り換えられないか確認する必要があります。
なお、マイナス金利政策の解除され「住宅ローンに影響が出るぞ!」と騒がれていましたが、実際、短プラは据え置きの1.475%だったので変動金利には影響はありませんでした。
しかし今後、短プラが上がれば住宅ローンにも影響しますので、引き続き動向チェック必須ですね!
何事も放置は厳禁ですよ!
「5年ルール」と「125%ルール」
住宅ローンを検討する際、変動金利のリスクについて理解することが重要です。
その中でも特に注目すべきは「5年ルール」と「125%ルール」。これらのルールは、金利が変動した際にどのように返済額が影響を受けるかを決定するもので、返済計画に大きな影響を与えます。
今回は、これらのルールについて詳しく解説し、変動金利のリスク管理方法について考えます。
5年ルール
「5年ルール」は、変動金利型の住宅ローンにおいて、金利が見直されるタイミングを示すルールです。このルールにより、以下のことが決まります。
- 金利見直しの頻度:変動金利は通常、半年ごとに金利が見直されますが、実際の返済額の見直しは5年ごとに行われる
- 返済額の変更:金利が変動しても5年間は返済額が固定されるが、元利均等返済方式では、元本と利息の内訳が変わる
仮に、変動金利型の住宅ローンを借りている場合、金利が半年ごとに見直されます。しかし、実際に毎月の返済額が変わるのは5年ごと。
例えば、初年度の返済額が10万円だった場合、金利が上昇しても、5年間はこの返済額が維持されます。ただし、返済額内の利息の割合が増えるため、元本の減りが遅くなります。
125%ルール
「125%ルール」は、5年ごとの返済額見直し時に適用されるルールです。このルールにより、次のことが制限されます。
- 返済額の上限:5年ごとの見直し時に、返済額は前回の返済額の125%を超えないように制限される。これにより、急激な返済額の増加を防げる。
- 返済額の調整:返済額の増加が制限されるため、元本の返済が遅れる可能性がある。結果として、ローンの残高が減りにくくなり、最終的な総返済額が増えることがある。
5年後に金利が上昇し、返済額が増加する場合でも、その増加は前回の返済額の125%までに制限されます。
例えば、初年度の返済額が10万円であった場合、5年後の返済額は最大で12.5万円までしか増えません。この制限により、急激な返済負担の増加が抑えられますが、その分、元本の返済が遅れることになります。
住宅ローンの変動金利で抑えたお金は積立投資で資産運用
変動金利よりも、投資信託の積立投資の方が利回りが高いことから、変動金利で抑えた月々の支払い分を積立投資に回し、資産運用で得た利益を住宅ローンの支払いに充てたり、家計全体で資産を増やしたりする方法がおすすめです。
NISAやiDeCoを活用すれば税金対策にもなるので、『変動金利×積立投資』で金利上昇リスクを回避しながら、効率的な資産運用をしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
変動金利を選ぶ際のポイント
- 金利の変動リスクを理解する:基準金利(短プラ)が上昇すると、返済額が増えるリスクがある
- 適用金利の引き下げ幅を確認する:自分の信用度や取引状況を考慮し、最適な引き下げ幅を提供してくれる銀行を選ぶ
- 定期的な見直しが重要:適用金利の動向を定期的に確認し、必要に応じて借り換え検討が重要
変動金利の住宅ローンは、低金利で借り入れができる魅力がありますが、金利変動リスクを十分に理解し、定期的に見直しを行うことが重要です。
また、変動金利と積立投資を組み合わせた戦略も検討することで、リスクを抑えつつ効率的な資産運用が可能となります。自分に最適な住宅ローンを見つけるために、基準金利と適用金利の仕組みをしっかり理解し、賢い選択をしていきましょう。